ガマの薬用部位は花粉です。『新潟県の薬草』(1897)という書籍には「消炎・止血作用があり、火傷・切り傷に花粉をふりかける。内服すると吐血・尿血・子宮出血・痔出血に良い。」と記されています。
ガマの穂の薬効と言えば、因幡の白兎の話を思い出します。騙した鮫に皮をはぎとられ、大勢の神々に「海塩を浴びて、吹く風にあたり、高山の尾に伏せ」と騙された白ウサギ。大国主命に「体を水で洗いガマの穂ワタにくるまれば治る」と教えられたと小学校の時に習いました。
ガマノホワタは秋にワタボコリになって飛び散る穂綿で、雌の花穂と思い込んでいましたが、これは間違いでした。『古事記』(712)によれば「水を持ちて汝が身を洗いて、すなはちその水門(河口)の蒲黄(かまのはな)を取りて、敷き散らして、その上にこいまろめば汝が身もとの膚のごと、必ず癒えむ」と大国主命がウサギ教えたとあります。
ウサギの赤肌を治したガマノホワタは雌の花穂から吹き飛ぶ白い穂綿でなく、雄の花穂につく花粉のことです。蒲の黄色の花粉を生薬名で「蒲黄」と書き、「ホオウ」と呼びます。蒲黄は佐渡で今も使われています。
佐渡島の畑野町小倉という地域の古桑さんは「6〜7月頃、ガマの雄の花の花粉を集めて、3日間くらい干して紙袋に保存しておく。おできやただれ、軽い火傷などに花粉をふりかける。ジクジク(患部から汁がでること)が、早く乾いて治りが良い」と言います。
『佐渡に於ける薬草』(1934)という書籍には「妊婦が膣内から下血するとき、雄花の花粉4グラムを白湯で飲むと、止まる事不思議なほどである。また舌がにわかに腫大して口の中いっぱいになった時、花粉に乾しショウガを少し混ぜて塗ると良い」と記されています。
『佐渡薬草風土記』引用