イケマの根は一種の強心配糖体を含み、民家薬として強心・利尿に用いられています。生の根のしぼり汁は内服すると腹痛吐血に効果があると言われています。ただし、飲み過ぎると有毒ですので1日3〜5gが限度です。
イケマはアイヌ語の「カムイケマ」の転略であり、“神なる根”という意味です。イケマは地中に大きな根をもち、アイヌ人はこの根を万病の薬として珍重しています。アイヌ人は植物の種類に対して名を付けず、利用する部分に名を付けるのですが、イケマは根に付けられた名であり、万病の薬効のあるこの根はまさに“神なる根”と言えるでしょう。
ただし、イケマの根は毒矢にも使われます。イケマの根にはシナンコトキシンという有毒物質が含まれており、カラスにイケマの根が入っている団子を食べさせると即死します。会津ではイケマをコサと呼ぶのですが、カラスがイケマの根が入っている団子を食べて死ぬ前にあげる声を「コサの一声」と言います。
アイヌ人はイケマの根を噛んだ時に発する強い臭気のある呼気を使って病魔を退散させるという呪法を使います。イケマの根は毒として使われますが、少量であれば薬となり、その呼気が病魔を退散させ万病を治癒させる“神なる根”です。近代薬理学はシナンコトキシンに強心利尿作用があり、イケマの根に含まれるポリオキシ・ブレグナン配糖体に抗腫瘍免疫増強性があるとしています。
『佐渡薬草風土記』引用