粟島ではイタドリの若い茎を4月に大量に採って塩漬けとして蓄えます。塩漬けにすると、酸っぱい味はなくなり、冬の汁の実として常食しました。越後でもトトガラ・トトンガラと呼ばれ、冬の汁の実となり煮付けとなりました。油揚げ、コンニャクなどと甘辛く煮つけたのが、越後の山村の“トトガラ煮付け”で、雪国の山村の生んだ郷土料理です。
雪が少なく、沖積平野と海を持つ佐渡には、イタドリの塩蔵もトトガラ煮付けも必要としませんでした。イタドリは子どもの野生のおやつです。佐渡島の佐和田という地域に住むある男性はこのように語ります。
「石田川の川ぐろを行きながら、スイカッポン(イタドリ)の茎をポンと折ながら、皮をスーッスーッと剥いて食べたこと。春、川の土手などにつんつんと生えだして、茎の先がまだ開ききらない、赤みを帯びた葉のかたまりがついている頃が柔らかで食べ頃だ。口に入れて噛むと、ちょっと酸っぱい汁が喉に伝わった。」
佐渡島ではイタドリのことをスイカッポン・スコンボ・スイカノポンポン・スッポン・スッポンポン・ポンポンズイコ・タケノコ・ヤマタケノコと呼びます。これは竹に似た茎、茎を折るときのポンと鳴る小気味良い音、食べたときの酸っぱい味を表した呼び名です。佐和田に住むある女性はこのように語ります。
「地上の緑の若い茎よりも、地中の白い茎の方がうんと美味しい。梅津川の河原にヤマダケ(オオイタドリ)の紅い芽が萌え出る4月。河原の砂をかき分けて、芽の下の白い茎を堀とる。ちょっと酸っぱくて、水っぽくて、何ともいえない美味しさだった。」
『佐渡山菜風土記』引用