菊池はるみ執筆[佐渡島の野草研究家]

トチバニンジンの特徴と効能

トチバニンジン

1.トチバニンジンとは

トチバニンジンとは山の林下に生えるウコギ科トチバニンジン属の多年草です。葉は五小葉の複葉でトチの葉に似ており、夏に長い柄を出し、先に球状の散形花序をつけます。花は淡黄緑色の小花です。薬用部は根茎。生薬名は和人参・竹節人参(ちくせつにんじん)です。

「佐渡島にチョウセンニンジンがあると聞いたのですが、見たことありますか?」と尋ねられたことがあるのですが、佐渡島にチョウセンニンジンがあるというのは間違いです。日本中どこの山にも自生していません。なぜこのようなことを言われるのかというとチョウセンニンジンとそっくりな薬草であるトチバニンジンが自生していることによります。

私がトチバニンジンを最初に見つけたのは昭和40年頃、大佐渡山系の金北山の東北のカキツバタ池周辺のミヤマナラ林内です。赤い実をいっぱいつけていました。また経塚山の桐花根茎を掘ってみると15センチと長かったです。トチバニンジンは里山にはなく奥山あると思っていましたが、そうではありません。自然が保たれているならば低地丘陵地から山頂にかけて分布するものです。

2.トチバニンジンの効能

トチバニンジンの絵

『新潟県の薬草』という書籍によれば、トチバニンジンには痰切り・健胃作用があるため胃のつかえ、消化不良、食欲不振、気管支炎などに用いたそうです。トチバニンジンの薬用部は根茎、成分は去痰作用のあるチクセツサポニンです。

伊沢一男著の『続 薬草カラー図鑑』には「竹節人参は苦みが強く、健胃・去痰作用が人参に勝るが、人参のように新陳代謝機能を盛んにする作用・強壮・病後の回復などは期待できない。根茎3〜6gを水300ccで3分の1量に煎じ、1日3回服用すると健胃・去痰に効く。」と記されています。

我が国特産のトチバニンジンが薬草であると教えたのは、明国人の何欽吉(カキンキチ)です。広東省の中国人で日本に帰化しました。寛永のころ(1624年)から万治6年(1658年)に没するまで、薩摩の国で薬草採集をした薬学者です。

薬草の専門家の何欽吉でさえ、日本のトチバニンジンの地上茎は葉、赤い実を見て、これこそ本物の薬用人参と判断し、歓喜雀踊して根を掘ったと言います。しかし、地下部は違います。チョウセンニンジンの人参状の根は無く、地下部は横に伸びる根茎です。トチバニンジンは根茎の節が目立ち、竹の節のように見えることから「竹節人参」とも呼ばれました。

『佐渡薬草風土記』引用