ウメとはバラ科サクラ属の落葉高木です。ウメの自生地は中国なのですが、日本には8世紀以前に渡来しました。日本書紀や古事記にウメについての記載があり、花木としてではなく生薬として渡来したようです。
青梅に藁を燃やした煙をあてて燻製にしたものを「烏梅(うばい)」と言うのですが、日本人が初めて出会ったウメはこの烏梅でした。花ではなく、外面が真っ黒で烏色、2〜3センチの球形で酸味が強いウメです。
烏梅の中国読み「ウメイ」から日本の呼び名のウメとなっていくのですが、平安・江戸・明治にはムメと呼ばれ、ウメ・ムメ論争が絶えませんでした。「梅花きぬどれがウメやらムメじゃやら」という与謝蕪村の句は、この論争を皮肉ったものです。
ウメの薬用部位は果実で、生薬名を「烏梅(うばい)」と言います。『新潟県の薬草』という書籍には「解熱・鎮痛の目的でカゼの初期に用いる。また、収斂作用を利用して下痢や食欲不振に用いる。梅肉エキスは激しい胃腸病に即効があって、下痢腹痛はたちまち止まる。」と記されています。
家庭医学書『家庭に於ける実際的看護の秘訣』の著者である筑田多吉さんは卓効ある梅肉エキスをぜひ作っていただきたいと言っています。「梅肉エキスをソラマメ大ほど服用すれば激しい胃腸病に即効があって下痢腹痛はたちまち止まり、気つけ薬となり熱を去る効、偉大であります。医者の診断のつかぬ不明熱で心配しているときに、豆粒ほど二つを二回も服用すればエキリ・赤痢でも熱下がり入院せずに治ります。」